スバル仲間がblogで紹介していて興味を持ったので読んでみました。アニメファンには脚本家として馴染みの深い豊田有恒氏が、ヤマトを特集した「大新聞」の記事に憤って著したという書籍です。
一大アニメブームを巻き起こし、中学・高校生以上の年代にアニメ視聴の枠を広げた金字塔「宇宙戦艦ヤマト」。その制作現場の貴重な記録でもあります。
※本日の画像は、すべてクリックで拡大します。
まえがきにある「日本国の名誉を全世界にわたって泥まみれにさせた」大新聞について、多くの人が思い浮かべるであろう新聞社がありますよね? 私の手元に、その新聞社(と断定できませんが)がヤマトを取り上げた記事の切り抜きがあったので読んでみました。
確かにこの記事でヤマトは、戦争賛美とか、日本が周辺国を侵略した暴挙や追い詰められた敗戦国の窮状の反映とか、その新聞社の論調に沿った書き方がされています。(ただ、著書の中では大新聞からの取材が2016年となってます。この切り抜き記事は2015年なので、豊田氏が指摘する記事は別のものかもしれません。)
何が悲しいって、この記事を書いた記者は中学生の頃に「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に涙した経験を持っているということ。当時の大人から戦争賛美と言われ、それに反発していた過去も記されています。ところが自分が大人になり大新聞の記者になったら、社是に則った記事を書く。私と同年代と思われるのに、寂しい大人を見た気持ちにさせられます。
※これらの記事は有料会員限定記事で今でも読めるようです。まぁお金払って読む価値があるとは、私には思えませんが。あ、こんなにリンク張っちゃったら、さっき題字の写真にモザイクかけた意味がありませんね。(^^;)
この新聞記事を読むと、豊田氏が「違う!」と声を上げたくなる気持ちも分かります。中学生だった当時、大人の一方的な意見に異を唱えた私としても「なんも分かってねぇ!」と言いたくなります。
そんなきっかけで著された本書の内容は、日本アニメ黎明期から始まり、ヤマトの制作の状況を刻々と記しています。ヤマトの着想に関する記述も詳しく、それを読めば戦争賛美や戦時下の日本国を反映したものではないことは明らかです。
ホント、フェイクニュースばかり撒き散らす新聞社は困ったものです。
さて、そんな本書ですが、ヤマトの制作が3作目、4作目と進むにつれて、その矛先も変わってきます。
本書の後半は、プロデューサー西崎義展氏の所行の数々が明かされています。当時から妙に「愛」を語る胡散臭いプロデューサーという印象でしたが、実像もそのまんまだったようです。
もちろん一方の言い分のみを信じるのは公平ではありませんが、ほぼリアルタイムでヤマトに接してきた自分の人生経験を振り返っても、十分に信じるに足る内容です。
西崎氏といえば、感動的な「さらば~」の後、同じストーリーをテレビシリーズで放送したかと思ったらラストシーンを改変。誰も死なずに続編へ繋げるという「2匹目のドジョウ」を取りに行く商業主義にウンザリしたものです。
その後も続々とシリーズ展開する中で、西崎氏のやり方は当時のアニメファンの間に伝わってきました。twitterはおろかインターネットもない時代、アニメ誌だって真実を書きづらい状況だったでしょうに、何の伝手も情報源もない自分のような一アニメファンにまで西崎氏の悪評が伝わってきたのですから相当なことです。
この本を読むと、本当にその通り(というか、それ以上)な事に驚くとともに、裁判で松本氏から著作権を奪ったという噂も真実味を帯びてきます。
法治国家である以上、確定した判決は尊重すべきです。が、クリエーターの知的所有権意識が曖昧なところにつけ込んで、証拠を固めて著作権を独り占めした(と思われる)事実に対して、アニメファンくらいは松本氏を信じても良いじゃないかと思うのです。
豊田氏は、西崎氏について罪過を責めるばかりでなく、ヤマトを世に送り出すことが可能となった彼の功績も十分に認めています。そういった公平な記述があるからこそ、ほかの記述の真実味も増すというものです。
最後に、近年リメイクされた「ヤマト2199」「ヤマト2202」の件にも触れていて、当時はメカデザインで参加した出渕裕氏が今回の総監督を引き受けるに当たり、松本氏へ仁義を通したというエピソードも紹介されています。
その際、松本氏は「わかった。やるからには頑張って良い作品を作りなさい」と激励したそうです。松本氏の度量の大きさもスゴイです。
ヤマトの歴史を紐解く1冊。良い本に出会えました。
(「続きを読む」に、記事中で引用しているマンガのお話も書いておきます。)
(byぶらっと)
最近のコメント