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2013年3月 3日 (日)

「古書の来歴(上・下)」読了

サラエボ・ハガダーという実在の祈祷書に纏わる史実をベースに、その本がどうやって歴史を生き延びてきたかをフィクションで補った物語です。※帯や裏表紙の解説以上のネタバレはない...はずです。
People_of_the_book イスラム同様に偶像崇拝を否定しているユダヤ教の祈祷書に描かれた細密な宗教画。どうしてそのような本が成立したのか、そしてその本が宗教対立による焚書の危機をどのようにかいくぐってきたのか。古書に付いた染み等の痕跡を頼りに、時代を遡りながら本に関わった人々の物語を紡いでいくという展開で、読み進めるほど本の物語が解き明かされます。

ユダヤ迫害の歴史やボスニア・ヘルツェゴビナの第二次大戦や民族対立による紛争などの前提知識がないと、上巻の前半くらいまではストレスが溜まります。分からないまま読んでいて良いのか、先にその辺を調べた方が物語を楽しめるのか...。
ボスニア・ヘルツェゴビナについてはネットでちょっと調べると大まかな歴史的な経緯が分かりました。その上で読み進めると、上巻の後半からは面白くて引き込まれます。ユダヤに関しては一般的な知識があれば、物語の中で補ってくれますし。

途中で何度も意外な展開(もちろんフィクションの部分で)があり、純粋にミステリーとしても楽しめます。そして、宗教や歴史、美術にも興味が持てるという、一粒で2度も3度も美味しいお話でした。

スペインでは15世紀にユダヤ教徒、キリスト教徒、ムスリムがお互いを尊重して共存していた「コンビベンシア」という時代があったそうです。そういう時代にそれぞれの文化を融合したサラエボ・ハガダーが作られ、宗教が対立する時代になっても、信仰を越えて芸術を守る人々によって現代まで伝えられてきた。そんな人々の数奇な運命に思いを馳せるのも、この物語の楽しみ方の一つです。

私は、「宗教は人が幸せになるためのものであるべき」と考えているので、自分の人生のよりどころにするのは良いですが、他の人に信仰を押しつけたり、そのために戦争になるというのでは本末転倒じゃないかと思っています。日本人の(ちょっといいかげんな)宗教観くらいがちょうど良いんじゃないですかね。
遠くない未来に、お互いの宗教を尊重する「コンビベンシア」のような時代が再びやってくる事を願います。

(byぶらっと)

 

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